電子回路の基礎知識

オペアンプの絶対最大定格

当記事では、オペアンプ(OPアンプ/OP-Amp)の絶対最大定格について詳しく解説します。

なお、デバイスメーカー各社で、記載されている絶対最大定格が微妙に異なりますが、当記事では主にアナログ・デバイセズ社のデータシートに記載されている絶対最大定格のパラメータを参考にさせていただきました。

オペアンプの絶対最大定格とは何か?

オペアンプの絶対最大定格とは、動作中のオペアンプが壊れないための仕様(値・範囲)になります。

一瞬でも絶対最大定格を超えてしまうと、オペアンプが壊れてしまう可能性が高くなるので、オペアンプを扱う際は必ず始めにデータシートで確認したほうが良いでしょう。

なお、オペアンプの絶対最大定格を理解するには、事前に理想オペアンプについて知っておいた方が良いです。以下の記事で詳しく説明しているので、ぜひご覧ください。

一方、もう一つ重要な仕様として「電気的特性」が挙げられます。実際のオペアンプの性能については、この電気的特性をデータシートで確認する必要があります。

オペアンプの電気的特性については、以下の記事に詳しくまとめてあります。

オペアンプの絶対最大定格

以下のように、オペアンプの絶対最大定格のパラメータをを一覧形式で示します。

アナログ・デバイセズ社など外資系デバイスメーカーのデータシートは必ず英語が最新になるので、併記してあるパラメータの英語名も覚えておくことをおすすめします。

絶対最大定格/ABSOLUTE MAXIMUM RATINGS

パラメータ 単位
電源電圧 Supply Voltage V
同相入力電圧 Common Mode Input Voltage V
差動入力電圧 Differentical Input Voltage V
保管温度範囲 Storage Temperature Range
動作温度範囲 Operating Temperature Range
接合温度範囲 Junction Temperature Range
ピン温度範囲 Lead Temperature
許容損失 Allowable Power Dissipation W
熱抵抗 Thermal Resistance ℃/W

電源電圧/Supply Voltage

絶対最大定格の電源電圧は、オペアンプの+側電源端子と-側電源端子に電圧を加えた時に壊れない最大値になります。

例えば、絶対最大定格の電源電圧が「36V」と規定されていれば、±18、±15、+36Vなど範囲内であれば、オペアンプは壊れません。

ただし、あくまでオペアンプが壊れない値であって、オペアンプの本来の特性を引き出すには、電気的特性の動作電源電圧範囲内にする必要があります。

入力電圧/Input Voltage

同相入力電圧/Common Mode Input Voltage

絶対最大定格の同相入力電圧は、オペアンプの入力端子+(Input +)と入力端子-(Input -)を同電位で加えた時に壊れない最大値になります。

電源電圧の最大電圧範囲に設定されていることが多く、デバイスメーカーによっては、データシートに単に「入力電圧」と記載されていることもあります。

差動入力電圧/Differentical Input Voltage

絶対最大定格の差動入力電圧は、オペアンプの入力端子+(Input +)と入力端子-(Input -)の間で加えた時に壊れない最大値になります。

「±電源電圧」で設定されていることが多く、極性は重要ではありません。

例えば、絶対最大定格の差動入力電圧が「±30V」だとしたら、オペアンプの入力端子+(Input +)と入力端子-(Input -)の差分電圧が「+30V」、「-30V」で極性が異なっていても、絶対最大定格の範囲内ということになります。

温度範囲/Temperature Range

保管温度範囲/Storage Temperature Range

保管温度範囲とは、オペアンプに電源を加えず動作させていない時に壊れない空気中の周囲温度範囲です。

デバイスメーカーによっては、保管温度範囲ではなく「保存温度範囲」と記載されている場合もあります。

動作温度範囲/Operating Temperature Range

動作温度範囲とは、オペアンプに電源を加えて動作させている時に壊れない空気中の周囲温度範囲です。

オペアンプ動作時には、内部で熱を発生するので、保管温度範囲より小さくなります。

接合温度範囲/Junction Temperature Range

接合温度範囲(ジャンクション温度範囲)とは、オペアンプに電源を加えて動作させている時に壊れないオペアンプ内部接合部の温度範囲です。

シリコン半導体だと、接合温度が150℃程度になると壊れてしまう可能性が高くなります。

また、接合温度範囲は、通常、保管温度範囲と同じ値になっています。

ピン温度/Lead Temperature

ピン温度範囲(リード温度範囲)は、オペアンプのピンをハンダ付けする時に壊れない温度です。

デバイスメーカーのデータシートには、「ハンダ付け10秒、温度300℃」などとハンダ付け時間と温度が記載されています。

まともにハンダ付けができれば、1箇所を1秒程度で行うことができるので、十分にクリアできる温度です。

ハンダゴテの詳しい解説については、以下の記事をご覧ください。

許容損失/Allowable Power Dissipation

許容損失$P_{D}$とは、オペアンプが壊れてしまう温度を超えない最大の消費電力になります。
(動作中のオペアンプは、消費電力が熱に変わりオペアンプ内部の温度が上昇して、絶対最大定格の温度範囲を超えると壊れてしまいます。)

通常、許容損失は、特に記載がなければ周囲温度25℃で規定されていることが多いので、当然ながら周囲温度が高い場合は許容損失は小さくなります。

熱抵抗/Thermal Resistance

熱抵抗とは、熱の伝えにくさ・逃げにくさを示すパラメータです。オペアンプの熱抵抗としては、以下のようなものが挙げられます。

オペアンプの熱抵抗
  • オペアンプ接合部-オペアンプ外部の熱抵抗$Q_{JA}$
  • オペアンプ接合部-オペアンプケース部の熱抵抗$Q_{JC}$
  • オペアンプケース部-オペアンプ外部の熱抵抗$Q_{CA}$

など

※熱抵抗$Q_{JC}$は、オペアンプケース部の「表面」と「裏面」にわけて考える場合もあります。

上図を見てもわかるように、$Q_{JA}$は$Q_{JC}$と$Q_{CA}$の和で算出することができます。
$$Q_{JA} = Q_{JC} + Q_{CA}$$
さらに、周囲温度$T_{A}$と消費電力$P$がわかれば、以下のようにオペアンプの接合温度を算出できます。
$$接合部温度T_{J} = 周囲温度T_{A} + 熱抵抗θ_{JA} × 消費電力P$$
このように、接合温度、許容損失(消費電力)、熱抵抗の間には密接な関係性があるので、オペアンプの熱設計の際に十分に理解しておくことが重要になってきます。

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