アナログ電子回路シミュレータのメリット・デメリット

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当記事では、エンジニア(回路設計者)の視点から見た「アナログ電子回路シミュレータのメリット・デメリット」について詳しく解説します。

デメリットについても書きましたが、むしろアナログ電子回路シミュレータの利用は、メリットの方が大きいと思いますので、ぜひとも活用していただきたいと思います。

目次

アナログ電子回路シミュレータのメリット

アナログ電子回路シミュレータのメリット
  1. 電気回路・電子回路の勉強に活用できる
  2. 電子製品の開発時間を短縮できる

電気回路・電子回路の勉強に活用できる

アナログ電子回路シミュレータを活用することで電気回路・電子回路の勉強に役立てることができます。

もちろん、電気回路・電子回路の基本的な動作を確認するために、自分で電子部品をハンダ付けして実際に回路を組んで実験することも大事です。

しかし、この場合、工具、電子部品などを用意する費用や回路を製作する時間を考えると、どうしても実験できる回数は限界があります。

アナログ電子回路シミュレータであれば、PC上で簡単に回路図を作成できる上に、わずか数秒から数十秒でシミュレーションをすることができるので非常にメリットが大きいです。

しかも、現在、PCの価格が手軽になっており、お金のない学生でもアナログ電子回路シミュレータを活用しやすい状況になっています。

また、アナログ・デバイセズ(旧リニアテクノロジー)では無料でデモ回路を配布するなど、デモ回路/サンプル回路についても入手しやすい状況になっているので、ぜひ活用してみると良いでしょう。

電子製品の開発時間を短縮できる

アナログ電子回路シミュレータを利用することで電子製品の開発時間を短縮することが可能です。

電子製品の中に組み込まれているアナログ電子回路が完成するまでの大まかな流れは以下のようになります。

アナログ電子回路が完成するまでの流れ
  1. 部品選定&回路設計
  2. 部品発注
  3. 基板設計&基板製造
  4. 基板実装
  5. 動作試験

全て一発でクリアできれば全く問題ありませんが、もし動作試験の段階で不具合が発覚したら、また「①部品選定&回路設計」に戻ってやり直さなければなりません。

しかし、部品選定&回路設計が終わった後に、アナログ電子回路シミュレータで回路動作をある程度、確認することができれば、無駄なやり直しが確実に減るので、結果的に時間とお金を節約することができます。

しかも、最近の電子部品はリード部品(挿入実装)ではなくチップ部品(表面実装)がほとんどなので、気軽にユニバーサル基板で試作することが難しくなってきました。

そのため、PC上で簡単に回路動作を確認できるアナログ電子回路シミュレータを電子回路設計の現場で利用するのは、昔に比べてより必須になってきていると言えるでしょう。

アナログ電子回路シミュレータのデメリット

アナログ電子回路シミュレータのデメリット
  1. アナログ電子回路シミュレータの種類が多すぎる
  2. 精度の高いSPICEモデルを用意しなければならない
  3. アナログ電子回路シミュレータただの計算機

アナログ電子回路シミュレータの種類が多すぎる

アナログ電子回路シミュレータはSPICEから派生したものだけでも以下のようにたくさんの種類があるので、一見、どれを選んだら良いのか迷ってしまうことが多いと思います。

アナログ電子回路シミュレータの種類
  • pice3f
  • ngspice
  • Qucs
  • HSPICE
  • PSpice
  • SmartSpice
  • LTSpice
  • TINA-TI

確かにこれらのアナログ電子回路シミュレータの中には、無料版は部品点数やノードの制限があったり、すでにソフトウェアの更新が停止しているものがあります。

しかし、現在ではLTspiceが無償かつ回路規模が無制限で利用できる上、他社のSPICEモデル(回路シミュレータ上の部品)でも問題なく追加できるので、アナログ電子回路シミュレータの中で一番おすすめです。

LTspiceの言語は英語になってしまいますが、それほど難しい英語ではありませんし、他の電子回路シミュレータに比べて、日本語でのLTspice関連の書籍も出回っています。

当サイトでもLTspiceの解説記事を多く投稿しているので、ぜひ活用してみて下さい。

精度の高いSPICEモデルを用意しなければならない

多くの回路シミュレータに標準で格納されているSPICEモデルは実部品とは異なり、再現性の低いシミュレーションしかできません。

また、部品メーカーが提供するSPICEモデルであっても、全てが精度が高いとは言えないのです。


このような制度の低いSPICEモデルで構成された回路だと、勉強用として、シミュレーションで基本的な電気回路・電子回路の動作を確認する分には問題ありませんが、電子製品で使われるアナログ電子回路の動作確認には使用することはできませんよね。

当然、一つでも精度の低いSPICEモデルが回路に混じってしまうと、実物の回路と結果が異なってしまうので、何とかして精度の高いSPICEモデルを入手しなければなりません。

精度の高いSPICEモデルを入手するには、SPICEモデル作成サービスの利用や自分でSPICEモデルを自作する方法があります。

ただし、SPICEモデル作成サービスは高額な費用が必要で、SPICEモデルの自作は高度な等価回路技術や測定機やソフトウェアの設備も必要になってきます。

また、精度の高いSPICEモデルを使用したシミュレーションであっても、完全に実際の回路の動作結果と一致させるのは難しく、数パーセントは結果がずれてしまいます。

そのため、開発用途としてはお金に余裕があるなど条件の整った一部の会社しか上手く回路シミュレータを活用できないと言えるでしょう。

アナログ電子回路シミュレータただの計算機

アナログ電子回路シミュレータは人間の代わりにアナログ電子回路を設計してくれるのではなく、ただの計算機に過ぎません。

そのため、回路シミュレータを使用する人間に正しい回路知識がないと、誤ったシミュレーション結果でも正しいものとして信じてしまいます。

私の学生時代でも、トランジスタのエミッタ増幅回路の設計で、素子のパラメータを変えながらシミュレータを行ったのですが、結局のところ、正しい回路知識がなかったため盲目的にシミュレーション結果を信じてしまった記憶があります。

アナログ電子回路シミュレータはとてもメリットの大きいツールであることは事実ですが、使用する人間のの回路知識に左右されるツールでもあるということになります。

まとめ

  • アナログ電子回路シミュレータは勉強用や電子回路設計の現場で大きなメリットがある
  • アナログ電子回路シミュレータの種類は多いが、現状はLTspiceの利用がおすすめ
  • アナログ電子回路シミュレータを上手に活用するには、正しい回路知識や精度の高いSPICEモデルが必要
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