LTspiceがなぜおすすめなのか!他の回路シミュレータとの比較は?
当記事では、数あるアナログ回路シミュレータと比較して、LTspiceがなぜおすすめなのかについて詳しく説明します。
LTspiceは、無償かつ回路規模が無制限で使用できる上に、他社のSPICEモデルの利用が可能だったり、解説情報が多かったりと、大変使い勝手が良いのです。
回路シミュレータの導入を考えている方は、コスト面や使い勝手を考えれば、LTspiceを第一候補と考えてまず間違いないはずですよ。
回路シミュレータとは何か?
回路シミュレータとはコンピュータで電子回路をモデル化して、動作や特性を計算・確認するソフトウェアの事です。
大きくわけると、以下のようにアナログ回路シミュレータとディジタル回路シミュレータに分類され、今回紹介するLTspiceはアナログ回路シミュレータになります。
- アナログ回路シミュレータ
- ディジタル回路シミュレータ
LTspiceはカリフォルニア大学バークレー校で1973年に開発された「SPICE」の派生ソフトウェアで、大手アナログ半導体メーカーのAnalog Devices(アナログ・デバイセズ)が提供しています。
また、商用回路シミュレータとして有名なPSpiceや大手アナログ半導体メーカーのTI(テキサス・インスルメンツ)が提供しているTINA-TIも同様にSPICEの派生ソフトウェアになります。
回路シミュレータを利用するメリットをたくさんあり、例を挙げると、電子回路設計を担当するエンジニアであれば、ブレッドボードでの試作を回路シミュレーションに置き換えることで、工数を削減することが可能ですし、PCさえあればすぐに導入できるので、工学系の学生やメーカーの新入社員の教育用としても優れています。
そして、数あるアナログ回路シミュレータの中でおすすめできるのがLTspiceであり、詳しい理由についてはこれから説明していきたいと思います。
LTspiceがおすすめできる理由
LTspiceがおすすめできる理由を大きく4つにわけて説明していきます。
LTspiceは無償かつ回路規模が無制限で使用できる
まず、LTspiceの大きなメリットとして挙げられるのが、無償かつ回路規模が無制限で使用できることです。
商用回路シミュレータとしてシェアが高いPSpiceは、電子回路設計システムであるOrCADの一部機能として提供されており、導入するとなるとかなりの費用が必要になってきます。
どうやら、OrCAD PSpice Designer/OrCAD PSpice Designer Plusともに導入の初年度は100万円以上の費用が必要で、1年ごとの更新のたびに数十万円の更新費用も発生するようです。
このような高額なコストがかかることになると、PSpiceを導入できるのは一部の大手企業に限られ、個人で利用するのはほぼ絶望的と言っていいでしょう。
また、SPICE系回路シミュレータはいくつか無料で利用できるものもありますが、残念なことにノード数や部品数など制限がある場合がほとんどなのです。
(PSpiceも制限のあるOrCAD Liteであれば、無料で利用できます。)
SPICE系回路シミュレータの比較
回路シミュレータ | ノード数制限 | 部品数制限 | 販売・提供元 |
---|---|---|---|
LTspice | 無制限 | 無制限 | ANALOG DEVICES (アナログ・デバイセズ) ※旧Linear Technology (旧リニアテクノロジー) |
TINA-TI | 無制限 | 無制限 | TI(テキサス・インスルメンツ) |
PSpice (OrCAD Lite) | 75ノード | トランジスタ 2個 デジタル1次デバイス数 65個 伝送線路数 10個 ペアカップルド線路数 4個 | ケイデンス・デザイン・システムズ |
SIMetrix | 内部アナログノード 140 デジタルノード 360 デジタルポート 720 デジタルコンポーネント 300 デジタル出力 360 | - | SIMetrix(シメトリクス) |
これらのことから、回路シミュレータを導入するなら、まず無償かつ回路規模が無制限で使用できるLTspiceがベストな選択だと思います。
なお、TI(テキサス・インスルメンツ)が提供するTINA-TIについても、以前は制限がありましたが、現在はLTspiceと同様に無償かつ回路規模が無制限になっています。
ただし、TINA-TIは、LTspiceと比較して書籍やWEBサイトでの解説情報が少なく、どうしても使いこなせるまで時間がかかってしまうのが難点です。
LTspiceは Analog Devices以外のSPICEモデルも利用できる
LTspiceは提供元である Analog Devices(アナログ・デバイセズ)のSPICEモデルが豊富で、ICやOPアンプなどが内蔵されています。
しかも、自社製品のSPICEモデルに限らず、他のメーカーのSPICEモデルも利用することが可能なので、LTspiceを活用する幅が広がります。もちろん、自作のSPICEモデルも利用可能です。
他のメーカーや自作のサブサーキットモデル(.subckt)やデバイスモデル(.model)の追加方法は、以下の記事で詳しくまとめましたので、ぜひご覧ください。
LTspiceの解説情報が多い(セミナー・書籍・WEBサイトなど)
LTspiceの提供元である Analog Devices(アナログ・デバイセズ)は頻繁に無料の初心者向けLTspiceセミナーが開催しています。
やはり、初めて回路シミュレータを使用する方にとっては、セミナー形式で使い方を教えてもらった方が覚えやすいはずです。
セミナーは東京/大阪/名古屋/福岡などの大都市で開催しているので、ぜひ利用してみると良いと思います。
さらに、現在、回路シミュレータの中では、LTspiceの解説情報が多く、セミナーに参加できなくても書籍やWEBサイトからLTspiceの使い方を容易に学ぶことができます。当サイトでも、LTspiceの使い方を詳しく解説しています。
一方、有償のPSpiceでも1日のトレーニングを開催していますが、受講料として3万円(+税)が必要となっています。また、TINA-TIでは、提供元のTI(テキサス・インスルメンツ)の公式WEBサイトを見る限りでは、セミナー・トレーニングを開催している様子はないようです。
加えて、書籍やWEBサイトの解説情報もLTspiceと比べると、PSpiceやTINA-TIはどうしても少なく、使い方を覚えるまでに時間がかかってしまうのが現状です。
LTspiceを正式採用する会社が増えてきている
LTspiceを正式採用する会社が増えてきているので、アナログ電子回路設計を目指す工学系の学生や現役エンジニアにとっては、LTspiceを使いこなせるスキルは必要になってくると思います。
Analog Devices(アナログ・デバイセズ)のWEBサイトにはLTspice採用事例として、LTspiceを採用している会社を紹介しており、キヤノンや日置など知名度の高いメーカーもLTspiceを新入社員の教育や実際の設計・開発現場で活用しているようです。
そのため、アナログ電子回路の知識があった上で、しっかりLTspiceを使いこなせるスキルを持っていれば、就職・転職にも有利ですし、実際の設計・開発や自己学習でも十分、役立つはずですよ。