オペアンプの非反転増幅回路

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当記事では、「オペアンプ(OPアンプ/OP-Amp)の非反転増幅回路」について詳しく解説していきます。

非反転増幅回路は、反転増幅回路と並んでオペアンプの中で最も基本的な回路で、入力に対して出力が反転しない増幅回路です。

目次

オペアンプの非反転増幅回路の特徴

非反転増幅回路

オペアンプ 非反転増幅回路

$$V_{out}=\left(1+\frac{R_2}{R_1}\right)V_{in}$$
非反転増幅回路は、上式の通り、$1+\frac{R_2}{R_1}$の増幅率で、$V_{in}$の信号が増幅され、$V_{out}$に出力されます。

例えば、$R_1=1kΩ, R_2=10kΩ, V_{in}=1V$であれば、$V_{out}=11V$になります。
$$V_{out}=\left(1+\frac{10k}{1k}\right) \times 1=11[V]$$

オペアンプの非反転増幅回路の特徴
  • 出力信号が入力信号に対して反転しない
  • 増幅率は1倍以上
  • 電気的に動作が不安定
  • 入力インピーダンスが非常に高い
  • 出力インピーダンスがほぼ0

出力信号が入力信号に対して反転しない

オペアンプの非反転増幅回路は、出力信号が入力信号に対して反転しないため、入力信号と出力信号の位相が同じになります。

例えば、入力電圧が+であれば出力電圧は+、入力電圧が-であれば出力電圧は-になるということです。

増幅率は1倍以上

オペアンプの非反転増幅回路の比率は$1+\frac{R_2}{R_1}$となっているので、必ず増幅率は1倍以上になります。

ただし、抵抗$R_1$を開放(∞Ω)、$R_2$を短絡(0Ω)とすることで、電圧フォロワ(ボルテージ・フォロワ)と呼ばれる、増幅率1倍のバッファを作ることができます。

電気的に動作が不安定

オペアンプの非反転増幅回路は、反転増幅回路と比較すると電気的に動作が不安定です。

オペアンプでは、$+$と$-$の端子がオペアンプ内部で仮想的に接続(仮想短絡/イマジナリショート/バーチャルショート)されています。

非反転増幅回路の場合、$+$端子に入力される電圧によって動作点が振られてしまい、仮想短絡を通じて接続されている$-$端子も同様に影響を受けてしまいます。

そのため、動作点が入力電圧によって振られることから、入力信号が直流や低周波であれば問題ありませんが、高周波となると動作が不安定になる恐れがあるのです。

入力インピーダンスが非常に高い

オペアンプの非反転増幅回路は、入力電圧が直接、$+$端子に入力されるため、入力インピーダンスが非常に高くなります。
(一般的に、オペアンプの$+$と$-$の入力端子は、どちらも入力インピーダンスが非常に高いです。)

そのため、非反転増幅回路の入力に接続する回路のインピーダンスがある程度高くても、ほとんど影響を受けることなく電圧降下が生じてしまうことはありません。精度の高い測定などに向いていると言えるでしょう。

出力インピーダンスがほぼ0

オペアンプの非反転増幅回路の出力インピーダンスは、負帰還の働きによって$V_{out}=\left(1+\frac{R_2}{R_1}\right)V_{in}$の関係式を満たす電圧に保たれているので、ほぼ0になります。

そのため、オペアンプの出力端子に接続する回路の入力インピーダンスのほとんど影響を受けず、電圧降下を起こさずに必要な信号レベルを取り出すことができます。

オペアンプの非反転増幅回路の計算

オペアンプの非反転増幅回路の関係式を求めるために、回路各部の電圧の関係式から算出する精密計算と理想オペアンプをヌラーモデルに置き換えた簡易計算をします。

精密計算1

オペアンプの回路図記号

オペアンプ 回路図記号

オペアンプは、$V_+$と$V_-$の2つの入力電圧の電位差をオープンループゲイン$A_{OL}$(開放利得$A_{OL}$)で増幅します。
$$V_{out}=A_{OL}(V_+-V_-)$$
非反転増幅回路

オペアンプ 非反転増幅回路

オペアンプの非反転増幅回路の場合、$V_+$と$V_{in}$が同じになります。
$$V_+=V_{in}$$
以上により、非反転増幅回路の$V_{out}$は以下のようになります。
$$V_{out}=A_{OL}(V_{in}-V_-)\cdots(1)$$
また、非反転増幅回路の$-$端子は入力インピーダンスが高く、電流が流れ込まないことから、以下のような分圧回路で表すことができます。

オペアンプ 非反転増幅回路 分圧回路

さらに、分圧回路をわかりやすく変形させると以下のようになります。

オペアンプ 非反転増幅回路 分圧回路

よって、$V_-$は以下のようになります。
$$V_-=\frac{R_1}{R_1+R_2}V_{out}\cdots(2)$$
(1)式に(2)式を代入することで、$V_{out}$を計算していきます。
$$V_{out}=A_{OL}\left(V_{in}-\frac{R_1}{R_1+R_2}V_{out}\right)$$
$$V_{out}=A_{OL}V_{in}-\frac{R_1}{R_1+R_2}A_{OL}V_{out}$$
$$V_{out}+\frac{R_1}{R_1+R_2}A_{OL}V_{out}=A_{OL}V_{in}$$
$$\frac{R_1+R_2}{R_1+R_2}V_{out}+\frac{A_{OL}R_1}{R_1+R_2}V_{out}=A_{OL}V_{in}$$
$$\frac{R_1+R_2+A_{OL}R_1}{R_1+R_2}V_{out}=A_{OL}V_{in}$$
$$V_{out}=\frac{R_1+R_2}{R_1+R_2+A_{OL}R_1}A_{OL}V_{in}$$
$$V_{out}=\left(\frac{R_1+R_2}{\frac{R_1+R_2+A_{OL}R_1}{A_{OL}}}\right)V_{in}$$
$$V_{out}=\left(\frac{1}{\frac{R_1+R_2+A_{OL}R_1}{A_{OL}(R_1+R_2)}}\right)V_{in}$$
$$V_{out}=\left(\frac{1}{\frac{A_{OL}R_1}{A_{OL}(R_1+R_2)}+\frac{R_1+R_2}{A_{OL}(R_1+R_2)}}\right)V_{in}$$
$$V_{out}=\left(\frac{1}{\frac{R_1}{R_1+R_2}+\frac{1}{A_{OL}}}\right)V_{in}$$
ここで、$A_{OL}$は極めて大きい値(∞)であることを考えると、$\frac{1}{A_{OL}}⇒0$になります。よって、最終的な$V_{out}$は以下のようになります。
$$V_{out}=\left(\frac{1}{\frac{R_1}{R_1+R_2}}\right)V_{in}$$
$$V_{out}=\frac{R_1+R_2}{R_1}V_{in}$$
$$V_{out}=\left(1+\frac{R_2}{R_1}\right)V_{in}$$

精密計算2

非反転増幅回路

オペアンプ 非反転増幅回路

オペアンプの非反転増幅回路の場合、$V_+$と$V_{in}$が同じになります。
$$V_+=V_{in}$$
さらに、$+$と$-$の端子は、仮想短絡(イマジナリショート/バーチャルショート)を通じて接続されていると考えることができます。
$$V_-=V_+=V_{in}\cdots(1)$$
また、非反転増幅回路の$-$端子は入力インピーダンスが高く、電流が流れ込まないことから、以下のような分圧回路で表すことができます。

オペアンプ 非反転増幅回路 分圧回路

さらに、分圧回路をわかりやすく変形させると以下のようになります。

オペアンプ 非反転増幅回路 分圧回路

よって、$V_-$は以下のようになります。
$$V_-=\frac{R_1}{R_1+R_2}V_{out}\cdots(2)$$
(1)式に(2)式を代入することで、$V_{out}$を求めることができます。
$$V_{in}=\frac{R_1}{R_1+R_2}V_{out}$$
$$\frac{R_1}{R_1+R_2}V_{out}=V_{in}$$
$$V_{out}=\frac{R_1+R_2}{R_1}V_{in}$$
$$V_{out}=\left(1+\frac{R_2}{R_1}\right)V_{in}$$

ヌラーモデルを使った計算

非反転増幅回路

オペアンプ 非反転増幅回路

これより、理想オペアンプをヌラーモデルに置き換えて、非反転増幅回路を以下の通り計算してみます。

ヌラーモデルを用いることで、オペアンプの仮想短絡(イマジナリショート/バーチャルショート)の状態などを表すことができるので、計算を簡単にできるのです。

なお、ヌラーモデル自体の詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

非反転増幅回路(ヌラーモデル)

オペアンプ 非反転増幅回路 ヌラーモデル

見やすくするために、回路図の形を変形させます。

オペアンプ 非反転増幅回路 ヌラーモデル 関係式

キルヒホッフの第2法則(電圧則)より、$V_{out},V_1,V_2$は以下の関係が成立します。
$$V_{out}=V_1+V_2$$
よって、$V_1$と$V_2$をそれぞれ求めていきます。まず$V_1$は以下のようになります。
$$V_1=V_{in}\cdots(1)$$
次に$V_2$は、キルヒホッフの第1法則(電流則)より、$I_2=I_1$となるので以下のようになります。
$$V_2=R_2I_2=R_2I_1$$
$I_1$を求めると以下のようになります。
$$I_1=\frac{V_1}{R_1}=\frac{V_{in}}{R_1}$$
そのため、最終的に$V_2$は、以下のようになります。
$$V_2=R_2I_2=R_2I_1=\frac{R_2}{R_1}V_{in}\cdots(2)$$
(1)式と(2)式を$V_{out}=V_1+V_2$に代入すると、非反転増幅回路の関係式を求めることができます。
$$V_{out}=V_1+V_2=V_{in}+\frac{R_2}{R_1}V_{in}$$
$$V_{out}=\left(1+\frac{R_2}{R_1}\right)V_{in}$$
このように、ヌラーモデルを用いた非反転増幅の等価回路から、関係式を算出することができました。

その他のオペアンプの回路例

当記事では、「オペアンプの非反転増幅回路」について詳しく解説してきましたが、その他にもオペアンプには様々な回路が存在します。

以下の記事で、比較的よく使われるオペアンプの回路について紹介しているので、ぜひご覧ください。

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