アナログ回路とデジタル回路の違い
当記事では、「アナログ回路とデジタル回路(ディジタル回路)の違い」について、詳しく解説していきます。
アナログ回路とデジタル回路は、全くの別物だと思われがちですが、実はデジタル回路はアナログ回路の一部として考えることができるのです。
アナログ回路とデジタル回路の基本イメージ
アナログ回路とデジタル回路は全く違うものと思われている方もいるかもしれませんが、実はデジタル回路はアナログ回路の一部として考えることができるのです。
実際に、トランジスタなどのアナログ素子から、デジタル素子を作ることができますし、昔の電子回路では、全ての機能がアナログ回路で構成されていました。
それでは、なぜ段々とアナログ回路からデジタル回路に置き換えが進んだかと言うと、一言で言えば、デジタル回路の設計が、アナログ回路の設計より簡単だからです。
デジタル回路はしきい値により、0(LOW)/1(HIGH)を判別して離散値(非連続の値)として扱うので理解しやすいです。
一方、アナログ回路は電気信号を連続値として扱うので、0/1で考えるデジタル回路より考慮する要素が多くなるため、より理解するのが難しくなってしまうのです。
また、デジタル回路では、ソフトウェアを搭載することが可能なため、機能の追加・修正を容易に行うことができます。
例えば、PCやスマートフォンでは、アプリケーション(アプリ)をダウンロード・インストールすることにより、簡単に自分好みにカスタマイズすることが可能です。
ただ、大部分の機能がアナログ回路からデジタル回路に置き換わったからとは言え、センサ回路や電源回路などアナログ回路でしか機能が実現できない部分も存在します。
温度や湿度などは、0/1の離散値ではなく、連続値の物理量になるので、センサ回路であれば、おのずとアナログ回路になるということがわかると思います。
そのため、現在の電子機器の電子回路は、アナログ回路とデジタル回路が混在しているパターンが多いです。
アナログ回路の特徴
アナログ回路は、連続的に変化する電気信号を扱うのが特徴です。
アナログ回路のメリット
- 多くの情報を短時間で伝えられる
- デジタル回路に置き換えできない
多くの情報を短時間で伝えられる
アナログ信号は、連続した値なので非常に短い時間で多くの情報を伝えることが可能です。
例えば、温度で「11℃」の情報を伝えたい場合、アナログ信号であれば、11℃=11Vとすると、電圧が読み取れれば短時間で温度がわかることになります。
デジタル回路に置き換えできない
センサ回路、電源回路、変調回路などアナログ回路でしか機能を実現できない場合があります。
例えば、温度を計測するセンサ回路であれば、当然ながら温度は、0/1のデジタル信号ではなく、21℃、34℃…などのアナログ信号になります。
このように、そもそもデジタル回路に置き換えできない場合は、アナログ回路を用いなければなりません。
アナログ回路のデメリット
- ノイズ、温度変化などの外乱に弱い
- 素子のバラツキの影響を受けやすい
- 小型化が難しい
- デジタル回路より設計が難しい
ノイズ、温度変化などの外乱に弱い
連続値のアナログ信号では、瞬間の値自体に意味があるため、ノイズ、温度変化などの外乱に弱いです。
例えば、電圧10.0Vの時、温度10.0℃を示すとすると、外乱により電圧が9.9Vに変化してしまうと、温度を示す値も9.9℃に変化してしまうことになります。
このように、わずかな値の変化にも結果に影響を与えてしまうことになります。
素子のバラツキの影響を受けやすい
アナログ回路では、製造時に電子部品(素子)に生じるバラツキの影響を受けやすくなります。
小型化が難しい
アナログ回路では、コンデンサやコイルなどの受動部品が必要になるため、小型化が難しいです。
デジタル回路より設計が難しい
アナログ回路を設計するには、微分積分、フーリエ級数などの解析学の知識が必要になってきます。
デジタル回路で必要な論理学の知識より難しいため、アナログ回路は、デジタル回路より設計が難しいと言えます。
デジタル回路の特徴
デジタル回路は、通常2つの有限個(0/1)の信号のみを扱うのが特徴です。
デジタル回路のメリット
- ノイズ、温度変化などの外乱に強い
- データの記憶が簡単
- ソフトウェアが搭載できる
- アナログ回路より設計が簡単
ノイズ、温度変化などの外乱に強い
デジタル回路はしきい値により、0(LOW)/1(HIGH)を判別して離散値(非連続の値)として扱うので、ノイズ、温度変化などの外乱に強くなります。
つまり、信号レベルが0~5Vの時、入力電圧が3.15Vより高ければHIGHレベル、入力電圧が1.35Vより低ければLOWレベルなどと、それぞれのレベルをしきい値により判断しているのです。
この場合、例えば、入力電圧が3.20V、3.21Vだと、どちらもHIGHレベルと判断されるので、外乱によるわずかな電圧の変化に影響を受けづらいと言えます。
データの記憶が簡単
デジタル回路は、ノイズに強いことからデータを記憶して、後から取り出す際にも劣化しづらいです。
しきい値により、0(LOW)/1(HIGH)のレベルを判断していることから、ノイズレベルが一定未満であれば、データを完璧に復元することが可能です。
ソフトウェアが搭載できる
デジタル回路には、ソフトウェアが搭載できるので、不具合や頻繁な仕様変更にも回路を変更することなく修正することができます。
例えば、メーカー側がユーザーに対してスマートフォンの新しい機能を追加したい場合、4G/LTEやWi-Fiなどを通じてアップデートすることができます。
アナログ回路より設計が簡単
デジタル回路を設計するには、微分積分、フーリエ級数などの解析学に比べて習得が簡単な論理学の知識です。
さらに、近年のデジタル回路設計は、VHDLやVerilog HDLなどハードウェア記述言語を使って設計できる上、机上のPCでシミュレーションを行えるので、アナログ回路より設計が簡単だと言えます。
デジタル回路のデメリット
- 多くの情報を伝えるのは長時間かかる
- アナログ回路の知識が必要になってきている
多くの情報を伝えるのは長時間かかる
デジタル信号は、基本的に0/1の2つの信号しか扱わないので、多くの情報を伝えるには長い時間が必要になります。
連続値のアナログ信号では、瞬間の値自体に意味がありましたが、デジタル信号では、2進数として0/1の信号を送らなければならないのです。
例えば、10進数で「11」という情報を伝えるには、2進数として「1011」と伝えなければなりません。また、より正確に信号を表すとなると、より多くのビット数が必要になるため、おのずと情報を伝えるのに長時間かかってしまいます。
アナログ回路の知識が必要になってきている
現在、アナログ回路とデジタル回路の設計は分業化され、それぞれ別のエンジニア(技術者)が対応することが多いです。
では、デジタル回路の設計者は、全くアナログ回路の知識は必要ないかと言うと、そうではありません。
昔のデジタル回路は動作周波数が低く、「集中定数回路網」という配線の中に含まれるコンデンサ・コイル成分を考慮しないモデルでも十分に成立しました。
しかし、現在のデジタル回路の動作周波数は高くなり、簡単な「集中定数回路網」のモデルでは説明できない現象が発生するようになりました。
そのため、配線に含まれるコンデンサ・コイル成分を考慮したモデルである「分布常数回路網」を当てはめた上でデジタル回路を設計する必要が出てきたのです。
また、現在の電子回路はアナログ回路とデジタル回路が混在しているパターンが多いことから、メインでデジタル回路の設計を目指すにしても、結局はアナログ回路の知識もある程度は必要になります。