LTspice-ドットコマンド「.softstart」(立ち上がり時間短縮)の使い方
当記事では、ドットコマンド「.softstart」(昇降圧電源の立ち上がり時間短縮)の使い方について詳しく解説します。
「.softstart」を使用して、アナログ・デバイセズ社の昇降圧電源のシミュレーション実行時に、立ち上がり時間を短縮することが可能です。
「.softstart」の構文
「.softstart」の構文は以下のようになります。係数として「1以下の値」を指定することで、アナログ・デバイセズ社の4スイッチタイプ昇降圧電源のシミュレーション実行時に、立ち上がり時間を短縮します。
一般的に、4スイッチタイプ昇降圧電源では、電圧出力が、立ち上がりから定常状態になるまでの時間が長くなってしまいます。
「.softstart」の構文を使用することによって、収束条件を緩めて、定常状態になる時間を早めることができます。
ただ、その分、出力電圧が実際の動作とは異なってしまい、特に係数を小さくしすぎるとオーバーシュートが大きくなってしまうので注意が必要です。
そのため、「.softstart」の構文を使用した時の動作を理解した上で、定常状態での負荷変動を確認したい場合などに活用すると良いでしょう。
例えば、係数を「0.7」とした場合は以下のようになります。
.softstart 0.7
「.softstart」のシミュレーション例
「.softstart」のシミュレーション例として、同期整流式昇降圧DC/DCコンバータのLTC3111のデモ回路において、「.softstart」を使って、シミュレーション実行時の立ち上がり時間を短縮します。
なお、2020年11月時点で、「.softstart」が有効な昇降圧電源は、以下に限られます。
- LTC3111
- LTC3115-1
以下のリンクをクリックして、アナログ・デバイセズ社のデモ回路ダウンロードページに移動します。
「Search」に「LTC3111」を入力します。検索結果にLTC3111のデモ回路へのリンクが表示されるのでダウンロードします。
まずは「.softstart」を使わずに、ツールバーの「Run」をクリックして通常のシミュレーションを実行します。
LTC3111の回路図で「out」を電圧プローブでクリックすると、波形ビューワでV(out)の電圧波形を確認することができます。
電圧出力が、立ち上がりから定常状態になるまでの時間は、約2.3[ms]であることがわかります。
「.softstart」の構文を作成するため、ツールバーの「SPICE Directive」をクリックします。
「.softstart」の構文は以下のように記述して配置します。
.softstart 0.7
まずは、「.softstart」の構文において、係数の値を「0.7」とした時で、シミュレーションを実行します。
「.softstart」の構文を配置した後、ツールバーの「Run」をクリックします。
電圧出力が、立ち上がりから定常状態になるまでの時間を確認すると、約1.7[ms]であることがわかります。
そのため、「.softstart」を使わなかった場合と比較して、定常状態になるまでの時間が約0.7倍になっています。
さらに、「.softstart」の構文において、係数の値を「0.1」とした時で、シミュレーションを実行してみます。
電圧出力が、立ち上がりから定常状態になるまでの時間を確認すると、約0.6[ms]であることがわかります。
そのため、「.softstart」を使わなかった場合と比較して、定常状態になるまでの時間が0.26倍になっているのですが、立ち上がり時のオーバーシュートがかなり大きくなってしまっていることがわかります。